Labnote04:ミニマルな世界に刺激を生む「F」コード

Labnote04:ミニマルな世界に刺激を生む「F」コード

前回のおさらいを少し。

音楽が奏でる物語には始まりと終わりがあり、CとGというたった2つのコードだけでも「始まりと終わり」を表現できる、と説明しました。2つのコードで創りだす世界観は、とてもミニマルで素敵ではありますが、現代の私たちにはもう少し刺激が必要です。「F」コードを加えることで、音楽の世界を少し複雑で刺激的に、そして彩りある表現に変えることができます。


[目次]

・音楽の寄り道もやっぱり楽しい!
・3つのコードで”Hey Jude”に挑戦
・「F」の性格(コードの機能)
・物語はエンディングが大事
・最後に:ほんの少しだけ音楽理論 (I/IV/Vって何のこと?)


音楽の寄り道もやっぱり楽しい!

 

「C」と「G」だけで構成される音楽を聴いていると、どうしても「次の音はCかG。」ということが予想できてしまいます。このように耳が慣れてしまうことで「飽き」が生じます。

 

例えば、自宅と学校(職場)の通り道。いつも同じルートを通れば同じ景色ばかり。いつもと違うルートを通れば新たな景色との出会いが生まれます(お洒落なカフェに偶然出会うとか)。それは新しい刺激となり、楽しい気分になります。

 

音楽もそれと似ていて、予想と異なる響きが聴こえると耳がピクッと動き、「おっ!」となります。なんか違うぞ、楽しいぞ!となります。

 

ここで一つ、きらきら星を弾いてみましょう。コードはCとGだけです。

*ここではラタノーツ「カノン」(スターターセット同梱)を使用しています。

 

同じコードの音ばかりで動きが少ない。どこか物足りないですね。

再度、きらきら星を弾いてみましょう。今度は「F」を登場させてみます。

 

雰囲気が変わりましたね。

音楽に動きが出て「C」と「G」だけよりも楽しそうに聴こえます。「F」コード、いいですね。面白くなってきました。



早速ですが、3つのコードで”Hey Jude”に挑戦

 

「F」の登場で表現できる音楽の幅も広がりました。では、これまで登場した「C」「G」「F」を使って、Beatlesの名曲”Hey Jude”に挑戦してみます。(権利の都合上、以下のリンクをクリックし、YouTubeでご覧ください。)

 

3つのコードでHey Judeを弾いてみた。(YouTube Ratatoneチャンネル)

https://youtu.be/fds6wEfOwjw

 

このようにたった3つのコードだけで、名曲が弾けてしまうのです。というよりも、これほど数少ないシンプルなコードで名曲を作ってしまうBeatlesがすごいですね。

(実際の楽曲では、C,G,Fに加え、AmとFの代理コードを用いて演奏されています。ここでは、コードの理解を優先するためCとGとFのみで演奏しています。)



「F」の性格(コードの機能)

 

音楽の終わり方には大きく分けて二通りあって、「着地感」と「非着地感」だという話は、前回のブログで触れました。コードの進み方によって音楽の終わりが「落ち着いた感じ(着地感)」であったり「落ち着き感が薄い(非着地感)」と感じられる、ということでしたね。

お辞儀の音
C → G → C: 落ち着いた感じ(着地感)

 

音楽の最後が「...→G→C」という流れで終わる時は、落ち着いた感じ(着地感)でした。

では、「F」を用いるとどうなるか。「...→F→C」という流れは、落ち着き感が薄くなります(非着地感)

 

この着地感、非着地感という感覚は、音と言葉で説明しても理解することは容易ではありません。感じ方は人それぞれなので説明が難しいですが、頑張って説明してみます。

 

次のイラストをご覧ください。

平らな地面に設置されたすべり台をモチーフにしました。そして、アルファベットがラベリングされています。ここでは難しく考えずに、

C = I(イチ)度

F = IV(ヨン/ヨ)度

G = V(ゴ)度

だと思って読み進めてください。イチ、ヨン、ゴです。あとで説明します。

 

I が地面、IVは一段上、Vが最上段にいます。階段を上ってすべり台を滑りおりるとしましょう。IVの高さとVの高さではどちらから滑りおりるほうが着地感を感じられるでしょうか。

やってみます。

最上段の高いVの位置から滑りおりるほうが着地感を感じられると思います(お辞儀の音と同じ感じ方ですね)。IVはフワフワしたゆるい着地というか、Vほどにストン!っと着地した感じは得られないのではないでしょうか。

 

このようにV(G)は、高いところで少し緊張感が高まり、早く地面に着地したい気持ちになっています。そして、I(C)の地面におりると緊張がほどけてとても安心した気持ちになる。緊張が強いため、安心が訪れた時の落ち着き感も強くなります。これが着地感となります。

 

続いて、IV(F)はV(G)ほどの緊張感はなく、すべり台の低い位置から軽くスッと滑りおりるため、Vに比べて着地した感じが薄くなります(非着地感)。

 

... V → I : 着地感(落ち着いた!という感じ)

... IV → I : 非着地感(落ち着いた感じが薄い)



物語はエンディングが大事

 

ここに出てきたI、IV、Vの組み合わせは、世の中にある多くの楽曲のエンディングで出現する基本的なパターンです。

 

音楽は、その時間の流れの中で時に落ち着いたり、時に激しくなったりとアップダウンを繰り返しながら物語が進んでいきます。そして、最後のエンディングをどのような形で締めくくるのか。映画のシナリオでもエンディングの締めくくり方は頭を悩ますところだと思います。

 

音楽も同じく、ハッピーエンドで綺麗にカッチリ終わらせるのか、まだ先が続きそうな余韻を残しつつ終わらせるのか。アーティストの想いが表現される場面です。

 

皆さんも、音楽を創る時には、ぜひエンディングをどのように演出するかに頭を悩ませてみてください。



最後に:ほんの少しだけ音楽理論 (I IV V)

 

「音楽理論」と聞くと一気に話が難しそうになりますね。でもご安心ください。一切難しいことはありません。



I / IV / Vって何のこと?

 

ブログの中で、頻出するI IV Vのアルファベットですが、結局何を示しているのでしょうか。

音楽の世界では、欠かせないコミュニケーションワードのようで、「4-5-3-6」とか、「4-3-6」といった会話がなされるようです。

 

下の図を見ていただきましょう。

各コード(和音)の一番下の音に注目すると、最初のCはになっています。次にレ 、そしてミファソラシと並んでいます。

 

始まりのドをI(イチ)としてカウントし、レ は隣りなのでII(ニ)、ミはその隣りなのでIII(サン)というように、ドを基点とした各和音の位置関係を示しています。(ハ長調の場合はドが基点。別の調では別の音が基点となりますが、ここでは割愛します。)

 

I / IV / Vはドを基点とした各和音(コード)の位置を表す
(ハ長調の場合)

 

これを見ると、先ほどの業界用語「4-5-3-6」も何を示しているか理解できます。「IV度→V度→III度→VI度のコードの流れで演奏する」という意味になります。ちなみに、この「4-5-3-6」進行は王道進行と呼ばれるようで、J-POPでもよく使われるコード進行。

 

他にも、前述の「4-3-6」進行は、丸サ進行と呼ばれ、椎名林檎さんの楽曲「丸の内サディスティック」で用いられたことで有名な進行です。この「丸サ進行」にするだけで、どんな曲でもオシャレに聴こえるのだとか。



今回は、Fのコードから始まり、最後は少し音楽理論の話まで進みました。

次回は、コード進行がもっと理解しやすくなるように、音楽理論の中の便利な知識をお借りして説明していきます。


*ブログの最初に登場したラタノーツ「カノン」はスターターセットの中に同梱されています。

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