音楽の中でよく耳にする「コード」。
楽譜をみると、音符達の上に小さな文字で「C」や「Dm」といった英語表記を目にしたことがあると思います。
音符の並びがメロディを奏で、コードはメロディと一緒に伴走する感じでしょうか。今回は、このコードについて少し話してみたいと思います。読んだ後、皆さんが聴いている音楽がいつもとちょっと違う聴こえ方になるかもしれません。
<目次>
・コード(和音)って何?
・コードの音、イメージしてみましょう。
・コードに名前をつけた人、グッジョブ!
・コードの個性
・コードの流れと響き(安定感と不安定感)
・CとGだけで演奏してみた
コード(和音)って何?
非常にざっくりな言い方をすると、演劇やドラマでの主役にあたるのがメロディとすると、主役を引き立てる背景や演出にあたるものがコードとなります。
コードは、英語表記では”chord”、和名では「和音」と呼び、「同時に3つもしくはそれ以上の音で構成された音」を指します。1590年代に”accord(一致する、調和する)”という言葉が短縮され、”cord”と区別するために”h”が追加されて今の”chord”になったとか。(参考:https://www.etymonline.com/word/chord)
3つもしくはそれ以上の音で構成された音
コードの音、イメージしてみましょう。
では、手始めに3つの音を準備してみます。「ど」と「み」と「そ」です。それぞれの音を一つずつ鳴らすと、単音だけが鳴り響くとてもシンプルな音になります。でも、これら3つの音を同時に鳴らすと。
音を一つずつ鳴らすよりも音に奥行きを感じられると思います。そして、少し重厚感が増したような気もしますね。わずか3つの音が重なるだけで、これほどまでに印象が変わります。音楽って本当に不思議!
コードには、「どみそ」の組み合わせ以外にも多くの種類があります。「れ」と「そ」と「し」を組み合わせたり、「ふぁ」「ら」「ど」を組み合わせたり。その数は、およそ数百種類にも及びます。
種類がとても多いので、いちいち「どみそ」とか「れそし」とは呼んではいられません。コードにもちゃんと名前があります。しかも、それぞれ個性もあります。まるで生命体みたいですね。
コードに名前をつけた人、グッジョブ!
「どみそ」というコードには、「C」という名前が付けられています。「Cコード」と聞けば、「どみそ、が調和したあの響きの感じ」となります。他にも「れそし」には「G」という名前があったり。名前で呼んだ方が圧倒的に呼びやすい。名前を付けた人は良い仕事をしましたね!
数百種類全てのコード名を列挙していくには紙面が足りないので、ここは割愛して先へ進みましょう。さて、今挙げた「Cコード」と「Gコード」ですが、実は皆さんにとって耳馴染みあるコードなんです。おそらく「聴いたことない」という人はいないと思います。
それは、お辞儀の時に流れる音。幼稚園、保育園、小学校で必ず聴く音ですね。
聴いてみましょう。
あの時、聴いていた音にコード名があったなんて知らなかった。。。
音楽コソコソ話
さらっとお話ししておくと、「C」「G」というコード名の他に「I(いち)度」「V(ご)度」と表記される「度数」という表現があります。調の制約を超えたとても便利な表記方法で、「I度」、「V度」、「IV度」というたった3つを知るだけで、あの世界的に有名な曲が演奏できます。詳細はまた別のブログで説明します。
コードの個性
人や生き物には名前があり、そして、それぞれ性格や役割があります。同じように、コードにも性格や役割(機能)というものがあります。そして、音楽の中でもコードの組み合わせ方次第で音楽自体の印象が変わります。
例えば、音楽を聴いていると、「希望溢れる明るい感じ」、「物悲しい感じ」、「未来へ歩んでいきそうな感じ」とか「綺麗に着地した感じ」など、いろんな印象を受けると思います。その背景には、コードの個性が影響しています。
再び、お辞儀の音に登場してもらいましょう。
どの音も元気ハツラツで明るい感じの音がしますね。
続いて、こちら。
どこか暗くて物悲しい感じがしませんか。よく見ると「きをつけ!」の「C」が「Cm」というコードに入れ替わっています。そして、「れい!」の「G」だけは同じコード。
[1回目] C > G > C
[2回目] Cm > G > Cm
たったそれだけの違いで、明るい感じから暗い感じに変わります。このように、コードにはそれぞれ雰囲気を作り出す機能を持っています。そして、時間の流れの中で、それぞれのコードの個性を組み合わせることで、音楽全体の雰囲気を明るくしたり、物悲しくしたり、お洒落にすることで音楽の背景を演出しています。
コードの組み合わせ方で音楽全体の雰囲気が変わる。
コードの流れと響き(着地感と非着地感)
前述の「コードの個性」の中で「綺麗に着地した感じ」と説明しました。「着地感?ちょっとイメージしにくいなぁ」という方のために少し聴き比べの実験をしてみましょう。
次の動画では、お辞儀の音が2回流れます。1回目と2回目を聴き比べてみましょう。
いかがでしょうか。
2回目の音を聴いた後、どんな気持ちになりましたか?1回目と2回目、どちらの音が落ち着いた感じがしますか。
聴き慣れた音だから、という点はさしひいても、1回目の方が音楽が終わって「落ち着いた」と感じられるはずです。
2回目の音は、音楽が終わっても「終わった」感が少ないというか、まだ次に音が聞こえてきそうな感じがします。
[1回目] C > G > C 落ち着いた感あり(着地感あり)
[2回目] C > G > Am 落ち着いた感薄い(着地感弱い、まだ音が続きそう)
このようにコードは、たった2種類を組み合わせるだけでも音楽の始まりと終わりを表現することができます。そして、わずか1つのコードを変えるだけで「まだ音楽が続きそう」と感じさせることができます。
世の中のほとんどの音楽には、物語があり、そして始まりと終わりがあります。そして、終わりの表現は大きく分けて既出の二通りなのです。着地感ある終わり方か、非着地感な終わり方か。
数百種類近くのコードの中から自分が表現したい音楽に合わせてコードを選抜し、組み合わせ方を緻密に設計し、聴き手に想いを届けています。
世の中のほとんどの音楽の終わり方は二通り。
着地感があるか、それとも、ない(非着地感)か。
CとGだけで演奏してみた。
CとGはとてもシンプルなコードの組み合わせです。実は、この2つのコードだけで、J-Popを演奏することもできます。
しかし、あまりにシンプル過ぎて面白味がなく、感情に訴えかけにくい、というところがあるので、その話はまたどこかで。ということで、ここでは一例として、童謡「メリーさんのひつじ」をご紹介します。
ラタノーツでは、コード表記は「C」「G」ではなく、「 I 」「 V 」などの度数で表記しています。
I (イチ度) = C
V (ゴ度) = G
だと思って読み替えてください。
お辞儀の音のように I (C)と V (G) の音が並んでいるのが分かるでしょうか。I とVを行ったりきたりして、最後に I で終わる。「 I 」で終わると「着地(終わった)感」が感じられます。このように「... > V > I 」の順序で終わる音楽は、単に童謡だけではなく、J-Popを含む世の中の多くの音楽に見られます。有名曲を例に挙げると、スピッツ「チェリー」、米津玄師「Lemon」も「V > I 」で終わっています。
チェリーもLemonも「 V > I 」の流れで音楽が終わっています。
コードの話、いかがでしたでしょうか。なんとなくでもお分かりいただけましたか?
今は「なんとなく分かったような気がする」程度でOKです。ブログを読んで自分で音を出してみて、聞き比べてもらえればOKです。後になって「なるほど!そういうことか!」という日が必ず来ますので、今は気軽にラタノーツ遊んでみてください。新しい発見が待っています。
*お辞儀の動画に紹介されている絵本「おとのコト」は「スターターセット」に同梱されています。
*きらきらぼし、Lemonは「スターターセット」に同梱されています。
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